収入が不安定な仕事を選びながら、心のどこかで「配偶者の収入に頼っている」という後ろめたさを感じていないでしょうか。
独立したい、事業を大きくしたいと思う一方で、家計を支えているのは自分ではなくパートナーの方だ、という負い目です。
でも、その後ろめたさは、必ずしも感じる必要のないものかもしれません。
収入が不安定な働き方は、自分の裁量で時間を使える自由さと引き換えに、成り立たない月があるリスクを常に抱えています。
そのリスクを、世帯のどこかで受け止められているなら、それは弱さではなく、むしろ理にかなった仕組みだと捉えることができます。
「リスク分散」は、投資の世界だけの話ではない
投資の世界には、「分散投資」という基本的な考え方があります。
値動きの傾向が異なる複数の資産を組み合わせておくと、片方が下がっても、もう片方でカバーできる可能性が高まり、全体としてのリスクを抑えられる、という考え方です。
20世紀半ばに理論としてまとめられて以来、金融の世界で広く使われてきた基本原則で、投資信託や年金の運用など、あらゆる場面に応用されています。
この考え方は、実は世帯の「収入」そのものにも当てはめて考えることができます。
一方が景気や体調に左右されにくい安定した収入源を持ち、もう一方が伸びしろはあるものの波のある収入源を持つ。
この組み合わせは、世帯全体で見れば、リスクを抑えながら成長の可能性も残す、理にかなった配分だと言えます。
ここで大事なのは、ただ「二人分の収入がある」ことではなく、「性質の異なる収入を組み合わせている」ということです。
同じように景気の影響を受けやすい仕事同士を組み合わせても、悪いときには両方揃って落ち込んでしまい、分散にはなりません。
安定した給与所得と、変動はあるが伸びしろもある事業所得のように、性質の違う収入を組み合わせているからこそ、意味のあるリスク分散になります。
つまり、配偶者の安定収入に頼っている状態は、「甘え」ではなく、世帯という単位で見た合理的なリスク配分の結果である、と捉え直すことができるのです。
自分も、そうやって事業を続けてこられた
自分自身、ガイド業という収入の波が大きい事業を続けてこられているのは、配偶者(妻)が公務員として安定した収入を得てくれているからです。
ガイドを始めた当初、仕事があまり入らず「もうやめて就職しようかな」とこぼしたとき、妻は笑いながら「今さら?」と一言。
もう始めたんだからやり通せ、と言われているようでした。
自分一人の収入だけでは到底成り立たなかった時期を越えて、今の事業があります。
ゲストの方から「自然の中で働けていいですね」と言っていただくこともありますが、その言葉をそのまま受け取れるほど、自分は強い人間でも立派な経営者でもありません。
ツアーの前日には天気を心配し、川の水量を心配し、考えても仕方のないことに悩んだりする、ごく普通の人間です。
その自分がリスクのある働き方を続けてこられているのは、間違いなく、配偶者という安定した柱があったからです。
事業の予約が増えてきた今でも、まだ「これ一本で生きている」と胸を張れるほどではありませんが、それでも続けてこられているのは、この土台があったからです。
頼れる相手がいない場合も、考え方は同じ
とはいえ、誰もが安定収入のあるパートナーを持っているわけではありません。
独身であったり、パートナーの収入も不安定であったりする場合は、自分の中に「もう一つの安定した柱」を作る、という発想に置き換えられます。
具体的には、生活費の3〜6ヶ月分を目安にした生活防衛資金を、事業用の口座とは別に確保しておく。
積立NISAのような制度を使って、事業の調子に左右されない資産形成を別に進めておく。
会社員時代の厚生年金や退職金制度など、事業とは切り離された将来の備えを維持しておくのも一つの手です。
これらはすべて、収入源(あるいは資産)を分散させて、事業の波をカバーするという、同じ考え方の応用です。
パートナーの有無にかかわらず、「安定した柱をどこかに一つ持っておく」という発想そのものは、誰にでも使えます。
逆の立場でも、同じ話が成り立つ
ここまでは、収入が不安定な側の視点で書いてきましたが、安定した給与収入がある側から見ても、同じ構造が見えてきます。
自分は安定した給与という守りの役割を担い、パートナーには波はあっても伸びしろのある事業という攻めの役割を任せる。
これも、世帯というチームの中で、リスクとリターンをあえて分担している状態だと捉えられます。
支えている側も、我慢しているわけではなく、世帯全体の資産形成に貢献する役割を担っている、と捉え直すことができます。
それでも、偏りすぎには注意したい
ただし、どちらか一方に頼り切ってしまう状態には、注意も必要です。
分散投資の考え方が有効なのは、あくまで「複数の柱」があってこそで、一つの収入源にすべてを依存してしまえば、そこが崩れたときのダメージはそのまま大きくなります。
配偶者に頼れているからこそ、いずれは自分の事業も「柱の一つ」として育てていく。
そのくらいの距離感でいるのが、長い目で見て健全なのだと思います。
後ろめたさより、感謝と現実的な判断を
収入が不安定な働き方を選んでいるからといって、配偶者の支えを申し訳なく思い続ける必要はありません。
それは世帯として見た、理にかなったリスクの取り方です。
大事なのは、その支えに甘えきることではなく、感謝しながら、自分の事業も少しずつ育てていくことなのだと思います。
後ろめたさを抱えたまま我慢するより、「今はこういう役割分担なんだ」と割り切ってしまった方が、事業にも家庭にも良い影響があるはずです。
そのうえで、事業がもう一段安定してきたら、今度は自分が世帯の安定を支える側に回っていく。
そんな順番で考えてみると、今の役割分担も、通過点の一つに見えてくるのではないでしょうか。


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