「まだ本気出してないだけ」その言葉、自分を守るための言い訳かも

自分の考え・記録

「本気を出せば、本当はもっとできるはず」

そう思いながら、実際には本気を出さないまま過ごしていることはないでしょうか。

やればできるはずのことを、なんとなく後回しにしたり、手前で止めてしまったり。

その感覚、実は自分を守るための、無意識の仕組みかもしれません。

「本気を出さない」のは、自尊心を守るため

心理学には「セルフハンディキャッピング」という考え方があります。

あらかじめ自分に不利な条件を作っておくことで、失敗したときに自尊心が受けるダメージを和らげようとする、心の働きのことです。

本気を出さずに失敗すれば、「本気を出していないから」で説明がつき、実力不足だと認めずに済みます。

逆に本気を出さないまま、それなりの結果が出れば、「本気を出せばもっとできる」という余白を残しておけます。

つまり、本気を出さないことには、失敗しても成功してもどちらに転んでも自尊心を守れる、という一種の合理性があるのです。

アドラー心理学には、これに近い考え方として「目的論」というものがあります。

トラウマや苦手意識のせいで行動できないのではなく、傷つくことを避けるという目的のために、行動しない状態をあえて選んでいる、という見方です。

原因が過去にあるのではなく、目的が今の行動を決めている、と捉えるのがこの考え方の特徴です。

セルフハンディキャッピングには、大きく分けて2つの形があるとされています。

一つは、準備不足や体調不良など、自分に不利な状況を実際に作ってしまう形。

もう一つは、「今回はあまり準備できていないので」と、先に言い訳を口にしておくだけの形です。

どちらも、結果が悪かったときに「本気ではなかったから仕方ない」と自分に言い聞かせるための、あらかじめの布石だという点は共通しています。

厄介なのは、これが意識的な計算ではなく、無意識のうちに起きるということです。

「疲れているから」「時間がないから」と本気で思っていても、その裏でこの仕組みが働いていることに、本人はなかなか気づけません。

自分にも、繰り返してきたパターンがあった

これは、自分自身が何度も繰り返してきたパターンでした。

高校の水泳部では、きつい練習を避けてもある程度結果が出て、大学でも最低限の勉強で単位を取ってきました。

今のガイド業の経営でも、本気で発信や集客に向き合わなくてもホームページから申し込みがあり、本気で営業をしていく姿勢や勢いがあまりない。

多少やればなんとかなってしまう場面が続いたことで、本気を出さずに済ませる癖が、ずっと続いてきたのだと思います。

失敗しても「まだ本気出してないし」と言い訳できる状態を、無意識に温存してきたのです。

年商が少しずつ増えてきた今でも、本気で経営に向き合えているかというと、正直まだ怪しいところがあります。

さっさとやれよ、という感じです。

事業の発信を後回しにするたび、「忙しいから」「今はそのタイミングじゃないから」と理由をつけてきましたが、突き詰めれば、本気でやって結果が出なかったときに傷つきたくない、という気持ちが根っこにあったのだと思います。

自分の中の「言い訳」に気づくヒント

このパターンは、次のような口ぐせに現れやすいと感じています。

「まだ本気出してないだけ」「本気出せばもっとできる」「今回はあまり準備できていないので」。

これらの言葉が口癖になっているなら、それは失敗を避けているのではなく、失敗したときの自尊心へのダメージを、あらかじめ和らげようとしているサインかもしれません。

責めるための材料ではなく、自分の癖を知るための手がかりとして捉えてみてください。

気づいたら、まずやることが変わる

この仕組みに気づくと、対処の仕方も変わってきます。

大事なのは、いきなり気合を入れ直すことではなく、「これは本番ではなく練習だ」と捉え直すことです。

失敗が怖いのは、それを「本番」だと思っているから。

すべてを練習だと考えれば、たとえ思うようにいかなくても、自尊心を守るための言い訳を用意しておく必要がなくなります。

具体的には、結果を人に見せる前提の「小さな挑戦」を、あらかじめ先に作ってしまうことです。

例えば、こんな形です。

  • 資格試験の勉強を先延ばしにしているなら、「そのうち勉強しよう」ではなく、模擬試験の日程を今すぐ予約し、結果を家族に見せると決めてしまう
  • 発信や集客を避けているなら、「いつか本気で取り組もう」ではなく、「今週の金曜までにSNSへ1本投稿する」と日付を決め、その予定を人に話しておく
  • 体を動かす習慣をつけたいなら、「暇なときに始めよう」ではなく、近くのマラソン大会やイベントに申し込みだけ先に済ませてしまう

どれも、「本気を出すぞ」という気持ちの問題にせず、後戻りしにくい小さな行動を先に確定させてしまう、という点が共通しています。

「今度こそ本気を出そう」と決意するのではなく、「言い訳できない小さな一歩」を先に用意してしまう。

逃げ道を先になくしてしまえば、本気を出さない、という選択肢自体が取りにくくなります。

もう一つ有効なのは、結果と自分の価値を切り離しておくことです。

「うまくいかなかった」という事実と、「自分に価値がない」という評価は、本来イコールではありません。

この2つを分けて考えられるようになるだけで、本気を出すことへのハードルはぐっと下がります。

そして、誰かに宣言して約束しまうことも一つの方法です。

「やってみます」と一言でも口に出しておくと、後から言い訳を差し込む余地が減ります。

自分を責める必要はない

このパターンに気づいたからといって、これまでの自分を責める必要はありません。

本気を出さずに済ませてきたのは、それだけ器用に立ち回れてきた証拠でもあります。

ただ、この先も同じパターンを続けるかどうかは、これから選び直せます。

「本気を出せばできるはず」という感覚を、言い訳として温存するのではなく、実際に試してみる材料に変えていく。

そのくらいの心構えで、十分だと思います。

完璧に本気を出し続けられる人などいません。

大事なのは、今日一つだけ、逃げ道のない小さな挑戦を選んでみることです。

その積み重ねが、いつの間にか「本気出してないだけ」という言葉を、口にする必要のないものに変えてくれるはずです。

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