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木材は山に捨てられている!?現場作業員が思う日本林業の問題

林業

林業現場に入って主に行なっている作業は「切り捨て間伐」です。

読んで字のごとく、間伐対象の木を倒してそのまま山に捨てています。

ここで浮かんでくる疑問が・・・

・捨てる木もったいなくない?

・切った木は売ってお金にならないの?

・それこそ森林破壊では?

・切った木を売ってないのになんで作業者に給料出るの?

 

などなど、ツッコミどころが満載なわけです。

なんでこんなことが起きているのかじっくり見ていきましょう。

そもそも間伐って?

なぜせっかく生えた木を切ってしまうのでしょうか。

それは畑の野菜を間引きするのと同じ考えかたです。あまりにも密に野菜が生えていると、お互いが成長を阻害して品質のいい野菜が取れないですよね。

この考え方と人工林の間伐は同じ考え方です。木同士がお互いに成長の阻害をしあえば、品質のいい木材を生産することはできません。それを防ぐために間伐をしています。

現在は間伐の真っ盛り

戦後の高度経済成長期に植えられた、スギやヒノキが育ってきていて、間伐しなければいけない状態の林が日本中にあります。

間伐しなければ、木がお互いの成長を阻害することで、弱く細い木になり、強い風が吹いたりしたら折れたりする危険性もあります。

そのため、間伐は林にとって重要な役目を果たしていて人間が手を加えないと品質のいい木材を生産することができません。

なぜ切り捨て間伐を行なうのか?

ではなぜ私が仕事をしている現場では間伐した木をそのまま山に捨ててくるのでしょうか。間伐材と行っても立派に育った木です。

そのまま運び出して何かに利用すればいいじゃんと思いますよね。

なぜこんなことが起きているのか見てみましょう。

①運び出せない

山奥に植えられた人工林に辿り着くまでに、歩いて一時間かかるなんてざらです。

切った木を運び出すためにはその林まで道をつける必要がありますが、山の斜度が急すぎたり、谷が入り組んでいたりして林道をつけることができません。

そんな現場では切った気を運び出すまでが大変だし、採算が合わないため、間伐したら山に木を捨てています。

②運び出すまでにコストがかかり赤字になる

間伐材を運び出すのに、様々なコストがかかります。人件費・チェーンソーなどの機械代、燃料代・運び出す重機のリース代もしくは維持費・間伐材を製材所などの加工場まで運ぶ運送代など、様々な経費がかかります。

経費がかかる上に現在のスギ丸太の値段は直径30cm・4mのもので値段が3,000円〜4,000円、1立方あたり(スギの体積を1m×1m×1mの立方体として計算したもの)10,000円〜15,000円程度にしかなりません。

そのため、前述の経費を売り上げから差し引くと、木材を山から出せば出すだけ赤字という負の連鎖が起きます。

そのため、運び出すのは諦め、間伐材を切り捨てています。

③運び出しても安い、加工しにくい

北米などの外国産の木材に比べて、日本のスギやヒノキは、節などが多く加工がしにくいとされています。そのため、外国産の木材需要がいまだに多いわけです。

加工しにくいので日本の木材は価値が低い傾向にあると言われています。

ホームセンターに行っても売っている木材は外国産が多いですよね。

なぜ売り物を捨てているのに我々作業員の給料が出せるのか

ここまで、間伐で切った木を運び出してもいなくて、売ってもいないのに、なぜ利益が出るのでしょうか。それは・・・

税金が投入されているから

日本の林業事業体の多くは、土建会社の道路工事の入札のように、公的機関の事業に入札をして仕事を取っています。

例えば、公的機関が、この10haの林の切り捨て間伐の施行の入札募集をかけます。その募集に林業事業体がかかる経費を算出し、入札をして仕事を取ってくるわけです。

施行の内容にもよりますが、公的事業となるので、日本の林業の大部分は税金でまかなわれています。

ちなみに、林業事業体の中でも、品質のいい材木を育てて売ることで生計を立てている事業所もあります。林業全部が税金というわけではないので誤解はないようにお願いします。

考えない林業

では切り捨て間伐や公的機関の入札制度で取ってきた仕事がメインになり、材木そのものを売らない林業では、作業者が品質のいい森づくりをしなくなってしまいます。

なぜなら、目の前にある木を切ればそれでおしまいなので、搬出のために伐倒方向を考えたり、品質のいい木を育てたり、材木を売ることで利益を上げることを考えなくてもよくなってしまいます。

仕様書に沿って全体の3割切っておけばok!

切り捨て間伐の事業の場合、施工する林の3割を間伐しなさいという仕様書の元に作業します。

そのため、林に生えている木の3本に1本・3本に1本・4本に1本と切っていけば全体の3割を切っていることになりますよね。つまりあまり考えなくても間伐ができてしまします。

考えないというのは、間伐する対象の木が品質のいいものだろうと悪いものだろうと関係なく切ってしまえばいいのです。どの木を残して、数十年後に品質のいい林になるかどうかは関係ない作業の仕方になってしまいます。

まとめ

切り捨て間伐は正直楽です。木を切って山に捨ててこればいいだけですから。

しかし、これはかなり深刻な問題だと思います。

日本は国土の7割も森林に覆われていますが、うまく木材を活用できていないのは、ダサいですよね。

実際、日本国内の木材需要は日本国内の供給で間に合うと試算されています。

安価に輸入できる外国産の木材を利用するのではなく、国内で生産消費できるシステムを作らなければ、日本の林業は衰退する一方だと思います。

以上現場からの声でした。この事実を多くの人に知ってもらうためにこの記事を書きました。

林業が悪いとも税金を使うのも悪いとは言っていません。このまま考えない林業が進んでいくことが問題です。

コメント

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